塾長 図書案内

塾長はどんな本を読んで、どんな考え方をもつ人なのか、その一端をご案内しようと いうのが塾長ブログ(図書案内)の意図です。今後、原則月次にて、前月にどんな本 を読んでどう感じたのかを率直に皆さんに発信していきます。特にお薦めの図書を紹 介しますので、気になった本があれば、手に取って読んでいただきたいと思います。
できれば、読んで何をどう感じたかをラインで共有できると嬉しいですね。
最初に紹介する「先月の一冊」は矢崎節夫著「みんなを好きに 金子みすゞ物語」で す。

皆さんは金子みすゞという童謡詩人をご存知ですか? 小職の出身地でもある山口県 長門市に1903年(明治36年)に生まれ、大正末期にすぐれた作品を発表し、西 條八十に「若き童謡詩人の中の巨星」とまで称賛されながら、1930年(昭和5年 )26歳の若さで世を去りました。没後、作品は埋もれ、長く忘れられていましたが 、童謡詩人・矢崎節夫氏の努力により512編の詩を収めた遺稿集が見つかり 、1984年「金子みすゞ全集」として出版されました。
金子みすゞの「蘇り」に貢献した矢崎節夫さんが「みんなを好きに」によせて、こう 書いています。(以下本書からの抜粋)

「昭和59年2月に『金子みすゞ全集』が出版されるまで、童謡を好きな人たちのな かのごくわずかな人をのぞいて、金子みすゞのことはだれも知りませんでした。この ごくわずかな人たちでさえ、みすゞがどのような生涯をすごしたのか、どれだけの数 の作品を残したのか、まったくわからないまま、『幻の童謡詩人』とよんでいたので す。」

「わたしがはじめて金子みすゞをしったのは、いまから40年以上も前、昭和41年 5月、大学1年のときでした。『日本童謡集』(岩波文庫)のなかに、『大漁』の一 遍がのっていたのです。『大漁』をよんだとき、この本に入っている、ほかの三百数 十篇の作品がいっぺんにきえてしまうほどの衝撃をうけました。わずか十行のなかに 、祭のようににぎわっている浜のよろこびと、海のなかの鰯のかなしみが、みごとに ssうたわれていたからです。金子みすゞとは、どんな人なのだろう。もっと作品を よんでみたい。このときから、わたしのみすゞ探しの旅ははじまったのです。」
「『みんなを好きに―金子みすゞ物語』を、今回書いたのは、みすゞさんがどんなひと だったのか―家族のこと、ふるさとのこと、ものの見方や考え方、生きていた時代など 、いま、わたしが知っていることを、小学生のみなさんに、きちんとお話ししたいを 考えたからです。」
というわけで、本書は小学生向けに書かれました。従って、漢字がすくなく、スイス イと読み進められる内容になっています。「金子みすゞさんは、まわりのみんな(人 だけでなく、動植物、石ころなどのものも入っています)を、こころからたいせつに 思い、大好きだった人」だと矢崎氏は書いています。そうした素朴でおおらかで、周 囲を愛したみすゞの心にちょっとだけ触れてみませんか?